子供の頃、僕は注射が超の付くほど苦手だった。注射のたびに、大声で泣き喚いていた。　肌に針が突き刺さる痛みで泣くというよりは、むしろ、針の先端が怖くて泣いていたのだ。　注射針が何かの拍子に飛んで来て、目の玉に突き刺さってしまうのではないか、という不安に駆られていたのだ。　大人になってからは、さすがに注射で泣くことはなくなった。　しかし今でも、細くて尖ったものを見ると、恐怖心に駆られる。　刺さったときの痛みを想像して、腋の下から汗が流れ落ちる。　だから僕は、注射をしなければならないときには、ずっと目を瞑ったままでいることにしているのだ。